「テレビ局の年収は1,000万円を超える」という話、就活中に一度は耳にしたのではないでしょうか。結論から言うと、よく見かける高い数字は、持株会社や放送会社の従業員の平均で、平均年齢は会社によって40代から50代です。新卒の給料や、入社1年目の手取りと同じものではありません。
どの会社の、いつの、誰の平均なのかを知らずに見ると、期待と現実がずれてしまいます。この記事では、次の順で整理します。
- 有価証券報告書の「平均年間給与」は何を表す数字か
- 持株会社と放送事業会社で、数字がどう違うのか
- 新卒の給料は、どこで確かめればいいのか
「年収は本当に高いの?」と気になっているテレビ局志望の学生向けに書きました。エンタメ業界全体の年収比較や、テレビ局の選考対策はここでは深く扱いません。
年収の数字は、各社が2026年6月に提出した有価証券報告書(2026年3月期)などの原本で、2026年10月18日に確かめたものです。応募や比較に使うときは、金融庁のEDINET(有価証券報告書を閲覧できる公式サイト)で最新の報告書を開いてください。
この記事の要点は3つです。テレビ局の高い年収の数字は、持株会社や放送会社の平均で、平均年齢は会社によって40代から50代であること。どの会社の数字なのかは、報告書の欄の見出しと注記で確かめられること。そして、新卒の給料は平均年収ではなく、募集要項の初任給で確かめることです。
テレビ局の年収は「有価証券報告書」で確かめる
ネットの「テレビ局の年収ランキング」は、記事ごとに年度も対象もばらばらです。まずは根拠になる資料の読み方を押さえておきましょう。
「平均年間給与」とは何の数字?
上場企業は、毎年「有価証券報告書」(略して有報)という報告書を国に提出します。その中の「従業員の状況」という欄に、提出した会社の従業員数、平均年齢、平均勤続年数、そして平均年間給与が載っています。
ここで押さえておきたいのは、この数字は「提出した会社1社」の従業員の平均だという点です。グループ全体の平均ではありません。多くの会社は、賞与(ボーナス)などを含めた金額だと注記しています。
つまり、新卒の給料を示す数字ではないんですね。比べるときは、決算期(どの年度か)と、何人の平均かを一緒に見るのが基本です。
在京キー局グループの数字(2026年3月期)
東京に本社を置く民放キー局は、どこもグループの頂点に持株会社があり、その持株会社が上場しています。2026年3月期の有価証券報告書には、持株会社の数字に加えて、グループで従業員がいちばん多い会社の数字も載っています。それがキー局の放送会社だった場合は、表に並べました。
| 会社 | 区分 | 平均年間給与 | 従業員数 | 平均年齢 |
|---|---|---|---|---|
| フジ・メディア・ホールディングス | 持株会社 | 1,577万円 | 122人 | 50.5歳 |
| フジテレビジョン | 放送会社 | 1,370万円 | 1,140人 | 42.9歳 |
| 日本テレビホールディングス | 持株会社 | 1,398万円 | 235人 | 48.6歳 |
| 日本テレビ放送網 | 放送会社 | 1,468万円 | 1,211人 | 43.8歳 |
| テレビ朝日 | 放送会社 | 1,500万円 | 1,234人 | 44.5歳 |
| テレビ東京ホールディングス | 持株会社 | 1,419万円 | 103人 | 46.3歳 |
| テレビ東京 | 放送会社 | 1,310万円 | 757人 | 41.6歳 |
| TBSホールディングス | 持株会社 | 1,328万円 | 269人 | 45.6歳 |
数字は各社の2026年3月期の有価証券報告書(2026年3月31日現在)の「従業員の状況」によります。万円未満は四捨五入しました。テレビ朝日ホールディングスは、持株会社の従業員84人が全員テレビ朝日からの兼務出向者で、持株会社としての平均年間給与は載っておらず、テレビ朝日の数字が載っています。TBSホールディングスは、グループで従業員がいちばん多い会社がテレビ局以外の会社だったため、TBSテレビの数字は報告書にありません。
数字を見るときの注意点
表を見ると、持株会社も放送会社も1,300万円台から1,500万円台に並んでいます。ただ、年度が1年違うだけで数字は動くものです。たとえば同じ報告書では、前の期と比べて、テレビ朝日の平均年間給与は9.3%増、フジテレビジョンは12.0%減でした。
ランキング記事を読むときは、次の2つを確かめてみてください。
- 何年3月期の数字か:古い記事の数字がそのまま使われていないか
- どの会社の数字か:持株会社の欄か、放送会社など別の会社の欄か
持株会社と放送会社で、数字が違うのはなぜ?
テレビ局グループの「上場している会社」と「番組を放送している会社」は、別の会社であることが多いんです。
持株会社と放送事業会社の関係
持株会社は、グループ会社の株を持ち、グループ全体の経営方針やお金の配分を決める会社です。実際に番組を作って放送するのは、その下にある放送事業会社の役割になります。
たとえば、TBSホールディングスはTBSテレビやTBSラジオの持株会社です。同じように、日本テレビホールディングスの下に日本テレビ放送網、フジ・メディア・ホールディングスの下にフジテレビジョンがあります。
新卒の就活で応募先として目にするのは、多くの場合、放送事業会社の名前のはずです。ニュースで見る「テレビ局の年収」と、自分が応募する会社が同じ会社かどうかは、最初に確かめておきたいポイントです。
持株会社の数字は、少人数・高年齢の平均
表の従業員数を見てください。持株会社は100人から200人台、放送会社は700人から1,200人台です。グループ全体では数千人が働いていても、持株会社で働く人は限られています。日本テレビホールディングスの報告書では、235人は子会社から当社への出向者だと注記されていました。
平均年齢も、持株会社は40代後半から50代、放送会社は40代前半です。フジ・メディア・ホールディングスは、平均年齢50.5歳、平均勤続年数23.3年でした。一方で、持株会社と放送会社のどちらの平均が高いかは会社によって逆になります。表の日本テレビとフジテレビを比べてみてください。
つまり、持株会社の平均年収は「グループで長く働いてきた人たちの平均」に近い数字です。新卒が入社してすぐにもらえる金額とは、性格がまったく違います。
放送会社の数字は、有報のどこに載っている?
では、日本テレビ放送網やフジテレビジョンそのものの平均年収は、どこで見られるのでしょうか?2026年3月期の報告書では、持株会社の欄のあとに、グループで従業員がいちばん多い会社の数字が載っていて、多くのキー局グループではそれが放送会社でした。ただ、TBSホールディングスのように、いちばん多い会社がテレビ局以外のこともあり、すべての放送会社の数字が見られるわけではありません。
放送事業会社そのものが上場している例もあります。BS11を放送する日本BS放送は、2025年8月期の有価証券報告書で、単体の平均年間給与が778.2万円、平均年齢が46.6歳、従業員数は99人でした。
BS局とキー局は事業の規模が違うので、そのまま比べることはできません。それでも、「テレビ局ならどこも1,000万円超」とは言い切れないことは見えてきます。
同じ持株会社でも、中身はそろっていない
もう1つ気をつけたいのが、持株会社どうしでも人数の数え方がそろっていない点です。テレビ朝日ホールディングスは、従業員84人が全員テレビ朝日からの兼務出向者で、報告書にはテレビ朝日の数字が載っています。テレビ東京ホールディングスの103人は、テレビ東京などとの兼務者を含めた人数です。会社ごとの注記を読むと、平均の対象になっている人の範囲が違うことが分かります。
人数が違えば、平均に含まれる職種や年齢の構成も変わります。表の順位だけで「この局がいちばん給料がいい」と決めるのは、少し早いかもしれません。
比べるなら、平均年間給与と一緒に、単体の従業員数と平均年齢も横に並べてみてください。それだけで、数字の見え方がだいぶ変わるはずです。
新卒1年目の給料はどう考える?
気になるのは「自分が入ったらいくらか」ですよね。ここは、平均年収とは別の資料で確かめる必要があります。
初任給は、募集要項で確かめる
新卒の給料を知る一次情報は、各社の募集要項に書かれた初任給です。月給の額に加えて、賞与の回数、各種手当、残業代の扱いが書かれているかを見てみましょう。
今回の検索では、テレビ局の放送事業会社の初任給を、公式の募集要項で確かめることはできませんでした。
比較の目安として、労務行政研究所の「2026年度 新入社員の初任給調査」(2026年4月30日公表の速報集計)では、東証プライム上場企業205社の大学卒(一律設定)の初任給が26万5,708円でした。テレビ局の初任給も、まずはこうした全体の水準と並べて見ると位置がつかみやすくなります。
平均年収と新卒の給料は、別の数字として見る
表の平均は、持株会社も放送会社も、平均勤続年数が14年から23年ほどの人たちの数字です。この平均からは、新卒の給料も、何年後にいくらになるかも読み取れません。
ただ、昇給の仕組みや、どの年次でどのくらい上がるかは会社ごとに違います。私はこの点を公開資料で確かめられていません。年功で上がる部分が大きいのか、役職や評価で差がつくのかは、説明会やOB・OG訪問で聞いてみるのが確実です。
聞くときは「年収はいくらですか」より、「入社5年目の人はどんな仕事を任されていますか」と仕事の中身から入ると、答えてもらいやすくなります。
キー局以外のテレビ局の年収はどう調べる?
在京キー局以外の局や会社では、年収を確かめる資料の出どころが違います。
ローカル局:上場していない会社が多い
地方のテレビ局(ローカル局)は上場していない会社が多く、有報で平均年収を確かめられないことがほとんどです。ただ、上場していなくても有報を出している会社はあるので、EDINETで社名を検索してみる価値はあります。ネットで見かける数字は、口コミの投稿や推計であることが多くなります。
口コミの数字は、投稿した人が少ないと大きくぶれるので、参考程度にとどめるのが無難です。
ローカル局の給料を知りたいなら、募集要項の初任給と、説明会で聞ける賞与や手当の話を組み合わせるのが現実的です。説明会で聞きにくければ、OB・OG訪問で先輩に尋ねる方法もあります。
NHK:有報ではなく、NHKが出す公表資料
NHKは株式会社ではなく、EDINETで有価証券報告書を確かめることはできません。職員の給与については、放送法第61条に基づいて、NHKが「職員の給与等の支給の基準」を公式サイトで公表しています(2026年10月18日時点で確認)。
ネット上には「NHKの平均年収は○○万円」という記事もあります。ただ、今回の検索で見た数字は、決算の数字から独自に割り算した推計や、古い年度の資料をもとにしたものでした。気になる人は、NHKの公式サイトで最新の公表資料を開いてみてください。数字を見るときは、何年度の資料かを先に確かめるのがおすすめです。
番組制作会社:雇用主が別になる
テレビの番組づくりには、局の社員だけでなく、番組制作会社の社員も関わっています。制作会社はテレビ局とは別の会社なので、給料の決まり方も別です。給料や働き方は、会社ごとの募集要項で確かめるのが基本になります。
「テレビの仕事がしたい」のか、「テレビ局の社員になりたい」のかで、比べるべき数字は変わります。エンタメ業界の中で年収を広く比べたい人は、エンタメ業界の年収ランキングをまとめた記事も合わせて読んでみてください。
年収の数字に振り回されないための確認リスト
ここまでの話を、応募前に確かめる項目にまとめます。気になる局を1社選び、次の6つを埋めてみてください。
| 確かめること | 見る場所 |
|---|---|
| 応募先の正式な会社名(持株会社か放送事業会社か) | 募集要項、会社概要 |
| 平均年間給与の決算期と、単体の従業員数 | EDINETの有価証券報告書 |
| 平均年齢と平均勤続年数 | 同じく有価証券報告書 |
| 初任給、賞与、手当の内容 | 募集要項 |
| 入社後の配属と、働き方の説明 | 説明会、OB・OG訪問 |
| 自分がやりたい仕事がその会社にあるか | 採用ページ、番組や事業の情報 |
空欄になった項目が、次に調べることです。
私はイベントの仕事で、テレビ局の制作スタッフとロケ現場で一緒になったことがあります。ただ、この記事の数字は、すべて公開資料の原本で確かめた範囲だけで書きました。
年収はテレビ局を選ぶ理由の1つになります。それでも、毎日向き合うのは仕事の中身です。テレビ局の仕事や採用の流れを先に知りたい人は、テレビ局の採用と仕事をまとめた記事から読んでみると、年収の数字も読みやすくなるはずです。
よくある質問
テレビ局の年収ランキングは信用できますか?
ランキングそのものがうそというわけではありません。ただ、元の数字は持株会社や放送会社の平均で、記事によって年度もばらばらです。決算期と従業員数が書かれていないランキングは、数字の意味を確かめにくいので、EDINETで元の報告書を開いて照らし合わせてみてください。
新卒1年目で年収1,000万円に届きますか?
今回確認できた資料からは、届くとは言えません。高い数字は、平均年齢が40代から50代の持株会社や放送会社の平均でした。1年目の給料は、募集要項の初任給と賞与の説明から考えるのが確実です。
有価証券報告書はどこで読めますか?
金融庁のEDINETで、会社名を入れて検索すると読めます。報告書の中の「従業員の状況」という欄に、平均年間給与や平均年齢が載っています。各社のIR(投資家向け情報)のページから開ける場合もあるので、探しやすいほうを使ってください。
まとめ:年収は「どの会社の、いつの、誰の平均か」で読む
テレビ局の年収として出回る1,300万円台から1,500万円台の数字は、持株会社や放送会社の平均です。平均年齢は会社によって40代から50代なので、新卒の給料とは別物と考えておきましょう。
最初の一歩として、気になる局を1社選び、EDINETでその持株会社の有価証券報告書を開いてみてください。「従業員の状況」の欄で、決算期、従業員数、平均年齢を確かめる。それから募集要項の初任給を見る。この順番で読むだけで、テレビ局の年収の数字に振り回されにくくなります。