「音楽業界の就職難易度って、結局どのくらいなんですか」
この質問をされるたびに、私は答えに詰まります。理由ははっきりしていて、レコード会社はどこも応募者数を公表していないからです。応募者数が出ていない以上、倍率は計算できません。ネットで見かける「◯◯倍」は、誰かがどこかで推定した数字です。
私はイベント・コンサート業界で15年以上、営業として現場に立ってきました。タイアップやイベントの相談で、レコード会社の宣伝担当やキャスティング担当と打ち合わせを重ねた回数は数えきれません。その立場から言うと、音楽業界の難易度は倍率より「1社が何人採るか」と「入口がいくつ開いているか」を見たほうが正確につかめます。
この記事では、2026年9月21日に各社の公式採用サイトと有価証券報告書で確認できた数字だけを並べます。就職偏差値や合格体験談のたぐいは使っていません。音楽業界の会社ごとに、何がどう狭いのかを分解していきます。
注意:募集要項は年度ごとに更新されます。この記事の数字は2026年9月21日時点で各社の公式サイトに掲載されていた内容です。応募の前に、必ず各社の採用ページで最新の情報を確認してください。音楽業界全体の入口の整理は音楽業界への就職は難しい?新卒で狙える職種・会社の選び方に書いています。この記事は会社ごとの数字を横並びにすることに絞った内容です。
「若干名」の枠に出す準備を、年内に整えておく
キャリアパーク就職エージェント(ポート株式会社)は、新卒の就活生向けの無料の就職支援です。対象は2027年3月・2028年3月に卒業予定の学生です(2026年9月22日時点、公式の申込フォーム)。
レコード会社の本エントリーは1月から3月に集まります。エントリーシートと面接の準備を年内に終わらせておくと、複数社に同時に出しても手が回ります。
結論:難易度の正体は「採用予定数 若干名」という4文字にある

先に、この記事でわかることをまとめます。
- 採用予定数を数字で公表しているレコード会社は、調べた範囲で1社もありませんでした。キングレコード・ポニーキャニオン・日本コロムビアグループは「若干名」、ソニーミュージックグループ・エイベックス・ビクターエンタテインメントは記載そのものがありません
- 倍率:全社とも応募総数を公表していないため、計算できません
- 採用大学:公式採用サイトに一覧を掲載している会社はゼロ
- 学歴要件:エイベックスは「学歴不問」、キングレコードは「学部学科不問・社会人経験のある人も応募可」。一方で日本コロムビアグループは「大学、大学院を卒業見込み」。同じ音楽業界でも門の形が違います
- 初任給:年俸392万円〜427万円のレンジに各社が並びますが、中に含まれる固定残業時間が20時間から52.5時間までバラバラで、額面だけを並べても比較になりません
「若干名」という表記は、要項の中でいちばん手強い4文字です。5人かもしれないし、2人かもしれない。会社の規模を見ると、その少なさに実感が湧きます。キングレコードの従業員は315名(2026年1月現在)、ポニーキャニオンは404名(2026年3月)、ユニバーサル ミュージックは約650名。数千人規模のメーカーや金融とは、そもそも母数が二桁違う世界です。
では市場が縮んでいるのかというと、そうでもありません。日本レコード協会が2026年3月4日に初めて公表した推計によれば、2025年年間の国内音楽ソフト・音楽配信売上は3,988億円。内訳はCDが1,686億1,900万円、ストリーミング/サブスクリプションが1,377億3,600万円で、パッケージと配信がほぼ拮抗するところまで来ています。同協会の集計ではデビューアーティスト数も2024年の266組から2025年は328組へ増えました。
ポイントは2つです。市場は動いているのに、1社あたりの採用枠は「若干名」で固定されていること。そして、公表されているのは採用する側の条件だけで、落ちた人数は誰も出していないこと。
主要レコード会社9社の新卒採用データ一覧(2026年9月21日時点の公式情報)

まず、各社の公式採用サイトに書いてあることをそのまま並べます。表記ゆれは各社の原文に合わせています。
| 会社 | 対象年度 | 募集職種 | 採用予定数 | 応募資格(学歴まわり) | 倍率/採用大学 |
|---|---|---|---|---|---|
| ソニー・ミュージックエンタテインメント(ソニーミュージックグループ) | 2027年新卒(2028年向けサイトは未公開) | グループ総合職採用/グループ専門職採用(経理・財務、エンタプライズITシステム、プログラマー、著作権・契約・法務、クリエイティブ2種) | 記載なし | 2000年4月2日以降生まれ。2027年3月までに大学・大学院・短大・専門学校(2年制以上)卒業見込み、または既卒で職歴なし | 公表なし |
| エイベックス | 2028年は「COMING SOON」。掲載は2027年4月入社向けの過去事例 | グループ一括採用(レーベル/アニメ・映像/アライアンス/ライヴ/マネジメント/海外/管理 など) | 記載なし | 2026年4月〜2027年3月卒業。性別、国籍、学歴は問わない | 公表なし |
| ユニバーサル ミュージック合同会社 | 2027年新卒/第二新卒採用(エントリーシート受付終了) | 公式サイトに記載なし(マイナビ2027で案内) | 記載なし | 公式サイトに記載なし | 公表なし |
| キングレコード | 2027年新卒(春採用終了/秋採用の本エントリー締切は2026年10月4日) | 総合職(みなし残業の対象として制作職・宣伝職・営業職・ライツ職を明記) | 若干名 | 2027年3月までに専門・短大・大学・大学院卒業見込み、または2027年4月1日に勤務可能。学部・学科不問、社会人経験のある人も応募可。第二新卒可 | 公表なし |
| ポニーキャニオン | 2027年度新卒(プレサイト) | 総合職/募集事業は音楽・アニメ・映像 | 若干名 | 2021年4月1日〜2027年3月31日に国内外の大学院・大学・短大・専門学校を卒業または卒業見込み。学部学科、国籍は問わない。既卒は職歴なしが条件 | 公表なし |
| ビクターエンタテインメント | 2027年度定期採用 | 総合職(グループ一括採用) | 記載なし | 2027年3月までに大学(大学院含む)、短大・専門学校(2年制以上)を卒業予定、または既卒で職歴なし | 公表なし |
| 日本コロムビアグループ | 2027年4月入社(エントリー受付終了) | グループ総合職/グループ専門職(エンジニア・クリエイティブ)/エンジニア(AIスペシャリスト) | 若干名 | 2027年3月末までに大学、大学院を卒業見込み、または既卒で職歴なし | 公表なし |
| トイズファクトリー | — | 公式サイトの採用情報はタイアップ部門(営業・デスク)、声優部門(マネージャーアシスタント・デスクアシスタント)のみ。新卒の募集要項の掲載なし | — | — | 公表なし |
| ワーナーミュージック・ジャパン | — | 公式サイトに採用ページの掲載を確認できず | — | — | 公表なし |
この表で先に見てほしいのは、右から2列目の応募資格です。既卒を受け入れる会社が多いという事実が、はっきり出ています。ソニーミュージックグループは「既卒で職歴なし」を明記、ポニーキャニオンは2021年4月以降の卒業まで対象、キングレコードにいたっては社会人経験者と第二新卒を名指しで歓迎しています。ユニバーサル ミュージックは採用の名称そのものが「2027年新卒/第二新卒採用」です。
私が打ち合わせで会ってきたレコード会社の担当者には、新卒でまっすぐ入ったタイプと、ライブ制作や小売から移ってきたタイプが混ざっていました。名刺交換の時点では見分けがつきません。要項を読むと、制度としても一本道ではないことがわかります。
次に会社の規模です。ソニーミュージックグループは採用サイトの会社概要で社員数をグループ計 約5,000名、売上高4,472億円(2025年3月期・グループ連結)と公表しています。エイベックスは連結従業員数1,372名(2026年3月31日現在)。ビクターエンタテインメントは約400名(グループ、2021年7月現在)、資本金55億9,500万円で株式会社JVCケンウッドの全額出資。日本コロムビアグループは連結333名(2026年4月1日現在)でした。
個社ごとの深掘りは、ソニーミュージックについてはソニーミュージックの就職難易度、ユニバーサルについてはユニバーサルミュージックへの就職は難しい?にまとめてあります。
初任給と、有価証券報告書で分かる年収・待遇

ここが、ネットでいちばん数字の荒れる領域です。落ち着いて、順番に見ていきましょう。
初任給は「含まれている残業時間」まで見ないと比べられない
| 会社 | 公式表記の初任給 | 含まれる固定残業・みなし残業 |
|---|---|---|
| ソニー・ミュージックエンタテインメント | 大卒・大学院了 年俸427万円+業績賞与/短大・専門卒 年俸400万円+業績賞与 | 時間外手当12.05万円/月(52.5時間相当)を含む。超過分は別途支給 |
| ポニーキャニオン | 初年度 年俸4,023,600円+期末賞与 | 固定残業代(月45時間分×12カ月/1,002,444円〜)を含む。超過分は別途支給 |
| エイベックス | 年俸3,924,000円(保障)〜(基本給3,384,000円〜+時間外20時間相当540,000円〜) | 20時間分。超過分・休日出勤・深夜勤務は別途支給 |
| キングレコード | 基本給236,740円(2025年度実績)/1年目モデル年収4,500,000円 | みなし残業手当30時間分(制作職・宣伝職・営業職・ライツ職) |
| 日本コロムビアグループ | 月給266,700円〜(基本給208,976円+残業見合給57,724円) | 35時間分。超過分は別途支給 |
| ビクターエンタテインメント | 基本給222,667円(2025年入社実績)+現場部門配属後は職務手当39,180円 | 職務手当は20時間分。超過分は別途支給 |
| ユニバーサル ミュージック合同会社 | 公式サイトに記載なし | — |
年俸の数字だけを見ると、ソニーミュージックグループの427万円が頭ひとつ抜けています。ただ、その中には月52.5時間分の時間外手当が入っています。ビクターエンタテインメントの職務手当は20時間分です。同じ「年収」でも、前提にしている働く時間が2倍以上違う。額面のランキングだけ並べたページを見かけたら、この列があるかどうかを確かめてみてください。
休日の条件も添えておきます。ビクターエンタテインメントは年間休日131日、ソニーミュージックグループは2025年の年間所定休日数130日、ユニバーサル ミュージックは年間所定休日125日に加えて有給休暇を毎年20日付与(入社初年度のみ入社月により変動、入社初日より付与)と公表しています。キングレコードは完全週休2日に夏季休暇5日と年末年始(12月29日〜1月4日)。ポニーキャニオンとエイベックスは完全フレックスまたはコアタイムなしのフレックスタイム制です。
有価証券報告書に出ている年収:ただし「どの会社の数字か」に注意
レコード会社の多くは非上場です。ソニー・ミュージックエンタテインメントはソニーグループ株式会社が株主、キングレコードは主な株主が株式会社講談社、ユニバーサル ミュージック合同会社はユニバーサル ミュージック グループの日本法人。これらの会社には、単体の有価証券報告書が存在しません。
有価証券報告書で数字を追えるのは、上場企業そのものか、上場企業の子会社として開示に登場する会社です。
| 提出会社 | 従業員数 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|---|
| エイベックス株式会社(第39期/2026年3月期) | 85名 | 42.5歳 | 12.8年 | 7,100千円(前事業年度比△6.1%) |
| 株式会社JVCケンウッド(第18期/2026年3月期) | 3,125人 | 50.8歳 | 23.4年 | 8,628,484円(前事業年度比+1.1%) |
| 株式会社フジ・メディア・ホールディングス(2026年3月期) | 122名 | 50.5歳 | 23.3年 | 15,770千円(前事業年度比△5.0%) |
注意:エイベックスの平均年間給与710万円は、提出会社の従業員85名の数字です。連結1,372名の平均ではありません。同じくフジ・メディア・ホールディングスの1,577万円は持株会社の122名の数字で、子会社であるポニーキャニオンの社員の平均ではありません。有価証券報告書の「提出会社の状況」は、多くの場合そのグループの本体機能だけを指します。ここが混ざったまま出回っている数字を何度も見かけました。
セグメント単位なら、もう少し現場に近い規模感が見えます。エイベックスの連結従業員1,372名のうち、音楽事業は1,071名、アニメ・映像事業が160名、海外事業が56名。JVCケンウッドの連結15,229人のうち、ビクターエンタテインメントが属するエンタテインメント ソリューションズ分野は1,060人でした。ビクターエンタテインメント単体の平均年収は、有価証券報告書に記載がありません(2026年9月21日確認)。
エイベックスの2026年3月期の業績は、売上高146,571百万円、経常利益4,333百万円、親会社株主に帰属する当期純利益3,553百万円。一方でポニーキャニオンについては、フジ・メディア・ホールディングスの有価証券報告書に「音楽パッケージが前期の規模に及ばず」「アニメのヒット作品数減少により配信が減収」とあり、アニメ制作費用に係る評価損6,347百万円を売上原価に計上して営業損失となった旨が記載されています。
待遇の周辺データも、ポニーキャニオンについては同報告書に出ています。管理職に占める女性労働者の割合27.8%、男性労働者の育児休業等取得率(正規雇用労働者)57.1%、労働者の男女の賃金の差異は全労働者で73.9%。ユニバーサル ミュージックは採用FAQで、育児休暇からの復職率100%(2024年3月末時点)と公表しています。
選考フローと時期:本エントリーは1月から3月に集中する

ここが実務でいちばん使えるところです。エントリー締切が数週間ずれているだけで、併願の組み方が変わります。
| 会社 | エントリー時期(2027年度採用の実績) | 選考フロー |
|---|---|---|
| ソニー・ミュージックエンタテインメント | エントリー締切 1月14日(水)13:00(JST) | エントリー→書類選考→適性検査(1月24日〜26日、東京・福岡・大阪・名古屋)→一次面接(大阪2月6日〜9日/東京2月14日〜3月3日)→二次面接(3月中〜下旬)→三次面接(3月下旬〜4月上旬)→最終面接(4月中旬)→内々定。適性検査を含めすべて対面 |
| エイベックス | 2026年1月5日(月)〜2月1日(日) | 公式サイトに記載なし |
| ポニーキャニオン | エントリーシート配布 2026年2月20日(金)/締切 3月19日(木)23:59 | 書類選考→面接・選考3〜4回+適性検査→最終面接 |
| ビクターエンタテインメント | 2026年3月1日(日)〜3月22日(日)23:59 | マイナビからエントリーシートを提出。志望職種によっては課題の提出あり |
| 日本コロムビアグループ | エントリー締切 3月15日 23:59/エントリーシート・課題提出 3月31日 23:59 | エントリー→書類選考案内→エントリーシート・課題提出→本選考(面接等、4月以降)。選考はすべて対面の予定 |
| キングレコード | 春採用:一次締切 2026年3月13日/最終締切 3月31日(終了)。秋採用:本エントリー締切 2026年10月4日(日) | マイナビからエントリー後、マイページでエントリーシートをダウンロードして提出。提出書類に基づく書類選考 |
| ユニバーサル ミュージック合同会社 | エントリーシート受付終了(2027年新卒/第二新卒採用) | 公式サイトに記載なし。マイナビ2027で案内 |
この表から読み取れることが3つあります。
1つ目。ソニーミュージックグループの締切が、他社より2カ月ほど早い。1月14日にエントリーが閉まり、1月下旬には対面の適性検査が始まります。3月に動き出す感覚でいると、ここだけ間に合いません。
2つ目。対面が前提の会社がある。ソニーミュージックグループは「各会場に来場できる方のみ選考対象となり、Webやその他の対応は行いません」と明記し、選考地域も東京・大阪・名古屋・福岡に限られています。日本コロムビアグループも選考は全て対面の予定と書いています。地方在住なら、交通費と日程を先に計算しておいたほうがいい。
3つ目。春に全滅しても、秋採用が残っている会社がある。キングレコードの秋採用は、この記事を書いている2026年9月21日時点で本エントリー締切が10月4日(日)。春採用で音楽業界を諦めた人にとって、ここはまだ開いている扉です。
2028年3月卒(28卒)の動きも、すでに始まっています。エイベックスは2026年4月1日に28卒向けマイページを公開し、6月25日に28卒対象の1dayオープンカンパニー開催を告知。ソニーミュージックグループは2026年8月7日に秋のインターンシップ開催を告知しています。ビクターエンタテインメントは2026年8月31日の「ぴあ エンタメ業界研究フェス Vol.2」、9月12日のブンナビ「秋冬インターンシップフェア」への参加を採用サイトで案内していました。エイベックスの2028年新卒採用ページ自体は、2026年9月21日時点で「COMING SOON」のままです。
学歴と採用大学は、どこまで公表されているのか

結論から言うと、採用大学の一覧を公式採用サイトに載せているレコード会社は、調べた範囲でありませんでした。「音楽業界 採用大学」で出てくるランキングは、公式の出どころがない数字です。
その代わり、学歴要件は要項にはっきり書いてあります。ここは読めば差がつきます。
- エイベックス:「エントリーにあたり、性別、国籍、学歴は問いません」
- キングレコード:「学部・学科不問、社会人経験のある方も応募可」。専門・短大・大学・大学院いずれも対象で、第二新卒も応募可
- ソニー・ミュージックエンタテインメント:大学・大学院・短大・専門学校(2年制以上)が対象。加えて「2000年4月2日以降生まれの方」という年齢の条件があり、理由を「若年層の長期キャリア形成のため」と明記
- ポニーキャニオン:大学院・大学・短大・専門学校が対象。「学部学科、国籍は問いません」
- ビクターエンタテインメント:大学(大学院含む)、短大・専門学校(2年制以上)
- 日本コロムビアグループ:「大学、大学院を卒業見込みの方」。短大・専門学校の記載はない
専門学校や短大からでも受けられる会社と、四年制大学以上に絞る会社が混在しています。自分の学歴で受けられる会社がどこなのかは、ランキング記事ではなく要項を見れば5分でわかります。
採用大学の代わりに、ソニーミュージックグループは採用サイトの特設ページで社員のデータをいくつか公開していました。新卒(2025年度)の男女比率は男性47.5%・女性52.5%。離職率は新卒3年目まで2.15%、5年目まで2.87%で、同ページには厚生労働省が公表する大卒の就職後3年以内の平均離職率34.9%が比較として併記されています。若手社員の出身地は1都1道2府30県+中国・韓国。仕事服は普段着98%・オフィスカジュアル2%・スーツ0%という項目もありました。
この「スーツ0%」を笑い話にする人がいますが、私は納得しました。打ち合わせでレコード会社に行くと、こちらだけスーツということがよくあったんです。現場に出る仕事が多い職種ほど、服装は動きやすさで決まっていきます。
職種別の入口:A&R・宣伝・営業・制作・デジタル・ライブ

「レコード会社に入る」とひとことで言っても、入口は職種で分かれています。総合職の一括採用が主流なので、入社時点で選べない会社がほとんど。それでも、どんな仕事があるかを知らずに面接へ行くのは無理でしょう。各社が公式に説明している職種を整理しました。
A&R(制作):作品の司令塔
ソニーミュージックグループでは「音楽企画制作」という名称で、「※通称A&R(アーティスト&レパートリー)」と注記されています。ビクターエンタテインメントは「A&R(制作)」と「A&R(宣伝)」に分けて説明し、制作担当は「楽曲選定からレコーディング、編曲、プロデューサーやエンジニアとの調整までを担い、作品の方向性を具体化します」としています。担当するアーティストによって制作と宣伝を兼ねる場合もあるとのこと。A&Rという仕事そのものはレコード会社A&Rの仕事内容となり方で詳しく書いています。
宣伝・プロモーション:メディア系とデジタル系に分かれる
ソニーミュージックグループの「音楽宣伝」は、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌に対して出演や掲載を交渉する「メディアプロモーション」と、WEB・SNS・動画チャンネルを使う「デジタルプロモーション」の2本立てです。ビクターエンタテインメントも同様に、マスメディア向けのメディアプロモーションと、SNSキャンペーンや広告出稿を担うデジタルプロモーションを分けて説明しています。
営業・マーケティング:パッケージと配信で仕事が違う
ビクターエンタテインメントの職種紹介では、CDやBlu-rayなどを市場に届ける「フィジカルマーケティング」と、配信サービス(DSP)への営業や販売促進を行う「デジタルマーケティング」が別々に立てられています。デジタルマーケティングは「データ分析ツールを駆使し、数字面から戦略的なマーケティングを考え、A&Rへ提案します」という説明でした。キングレコードはみなし残業手当の対象職種として「制作職・宣伝職・営業職・ライツ職」を挙げており、営業とライツ(権利ビジネス)が独立した職種として存在することがわかります。
制作・ライブ・グッズ:会社によって事業の幅が違う
ポニーキャニオンの「仕事図鑑」は、制作を「音楽制作/アニメ・映像制作/ライブ制作/グッズ制作」の4つに分けています。募集事業そのものが「音楽/アニメ/映像」です。ソニーミュージックグループでは「ファンクラブ運営」「グッズ企画制作」「イベント・展示会運営」「ディスク製造・ロジスティクス[静岡]」といった職種も紹介されていました。ビクターエンタテインメントは自社施設として「ビクタースタジオ」と「Veats SHIBUYA」の運営を職種紹介に含めています。
専門職:初期配属が確約される枠がある
ここが、意外と見落とされている入口です。ソニーミュージックグループの「グループ専門職採用」は、経理・財務/エンタプライズITシステム/プログラマー/著作権・契約・法務/クリエイティブ(空間設計・企画)/クリエイティブ(アートディレクション・制作プロデュース)の6職種で、「エントリー時に希望された職種を確約します」と明記されています。日本コロムビアグループも「グループ専門職(エンジニア・クリエイティブ)」と「エンジニア(AIスペシャリスト)」を総合職とは別枠で募集していました。総合職では戦えないと思っている人でも、自分の専門で勝負できる可能性があります。
レコード会社が全部ダメでも、音楽業界の入口はまだある

レコード会社の新卒枠が「若干名」である以上、そこだけを見て就活を組み立てるのは設計として無理があります。音楽の仕事は、レコード会社の外側にも広がっている。
ライブ制作・会場運営
ソニーミュージックグループには、ライブ・イベントの企画制作運営やグッズ、ファンクラブ運営、レコーディングスタジオ運営までを手がける株式会社ソニー・ミュージックソリューションズと、国内6都市9カ所(札幌・東京3カ所・横浜・名古屋・大阪2カ所・福岡)に加えて台湾・マレーシアでコンサートホール「Zepp」を運営する株式会社Zeppホールネットワークが含まれます。同グループの採用サイトには、これらのグループ会社の新卒採用情報へのリンクも置かれていました。
音楽出版
著作権を扱う音楽出版社も別の入口です。フジ・メディア・ホールディングスの有価証券報告書には、同社子会社の㈱フジパシフィックミュージックについて「主力の著作権使用料収入が堅調に推移したことに加え、原盤使用料収入やマネージメント収入も伸長し、増収増益」と記載されています。派手さはありませんが、権利は減らない資産です。
芸能事務所・マネジメント
ビクターエンタテインメントの職種紹介には「ビクターエンタテインメントグループには音楽アーティストの他に、俳優、声優、お笑い芸人などのタレントも多く所属しています」とあり、マネージャー職が独立した職種として立っています。ソニーミュージックグループにも「マネージャー」職があり、担当範囲はアーティストだけでなく俳優・声優・タレント・芸人まで及びます。
配信・アニメ
ポニーキャニオンの募集事業は「音楽/アニメ/映像」、エイベックスの配属部門例には「アニメ・映像部門」が入っています。日本コロムビアグループは「デジタルマーケティングプランナー」「デジタルセールス」「アニメ販促プランナー」といった具体的な職種名を採用サイトに並べていました。音楽そのものより、音楽の隣にある事業のほうが採用枠を持っているケースもあります。
落ちたとき、それでも業界に残りたいなら
ここまで見てきたとおり、レコード会社の多くは既卒・第二新卒に門を開けています。ソニーミュージックグループは既卒で職歴なしなら応募可、ポニーキャニオンは2021年4月以降の卒業まで対象、キングレコードは社会人経験者も第二新卒も受け付ける。ユニバーサル ミュージックは採用の名称が「新卒/第二新卒採用」です。新卒で決まらなかったことが、そのまま終わりにはなりません。
そのうえで、一度どこかで働きながら業界を目指すなら、広告・クリエイティブ領域に強い人材サービスに相談先を持っておくと選択肢が増えます。私も業界内で動くときに登録したことがあります。宣伝会議グループが運営するマスメディアンは、広告・マスコミ・クリエイティブ職に絞った求人を扱うエージェントで、相談は無料です。評判や向き不向きはマスメディアンの評判と口コミを実体験ベースで解説にまとめました。
補足しておくと、マスメディアンは既卒・第二新卒・社会人の転職に向けた相談先です。在学中の新卒就活で相談先を探しているなら、この記事の前半で紹介したキャリアパーク就職エージェントのほうが対象に合っています。
申し込む前に準備するものと面談までの流れはマスメディアンに申し込む前のチェックリストにまとめています。
注意:マスメディアンは転職支援のサービスです。在学中の新卒就活そのものを代行してくれるわけではありません。既卒・第二新卒として業界を目指す段階、あるいは一度別の会社に入ってから音楽・エンタメ業界に移る段階で使う相談先として書いています。エイベックスの中途採用の難しさについてはエイベックス転職は難しい?現実と成功への具体的攻略法で別に書きました。
コンサートの営業としてレコード会社と向き合ってきて、見えていたこと

ここからは数字の話ではなく、私が15年やってきた中で感じたことを書きます。
私の仕事は、イベントやコンサートの企画をレコード会社に持ち込んで、アーティストの出演やタイアップを相談することでした。会う相手は宣伝担当やキャスティング担当。打ち合わせの席で、何度も同じ景色を見てきました。
企画書を出した瞬間、先方が最初に確認するのは予算でも集客見込みでもありませんでした。「このアーティストにとって、これをやる意味は何ですか」。そこを答えられないと、どれだけ数字を積んでも話が前に進まない。逆にそこが通ると、細かい条件は後からいくらでも調整してくれました。
この感覚は、採用の場でも同じだと思っています。「音楽が好きです」で止まる人と、「このアーティストにとって自分は何ができるか」まで言葉にできる人の差です。前者は毎年何千人も来ます。後者は、そんなに多くありません。
もうひとつ。レコード会社の人と仕事をしていて印象に残っているのは、一人が抱えている仕事の幅の広さです。同じ担当者が、音源の制作進行の話をした30分後に、テレビ局への持ち込みの話をして、その足でライブの物販の相談をしている。従業員300〜600名規模の会社で数百組のアーティストを動かしているのだから、当然そうなります。
だから「若干名」なんだと思います。人数を増やして分業するより、幅広く動ける人を少しだけ採って、現場で育てる。採用予定数の少なさは、会社の意地悪ではなく、仕事の構造から来ている。そう考えると、面接で何を見られているかも想像がつきやすくなります。
志望動機を「好き」で終わらせないこと。そして、自分が動ける幅を具体的に語れること。要項からは読み取れませんが、私が現場で感じてきたのはこの2点です。
よくある質問

音楽業界の就職倍率は何倍ですか
公表している会社はありません。この記事で調べたレコード会社9社のうち、応募総数を公式サイトに掲載している会社は1社もありませんでした(2026年9月21日確認)。採用予定数についても「若干名」または記載なしで、分母も分子も公開されていないのが実情です。
音楽業界の就職ランキングはありますか
公式に確認できる指標で並べるなら、初任給(年俸表記ではソニーミュージックグループ427万円、ポニーキャニオン402万3,600円、エイベックス392万4,000円)、年間休日(ビクターエンタテインメント131日、ソニーミュージックグループ130日、ユニバーサル ミュージック125日)、従業員規模(ソニーミュージックグループ計 約5,000名、エイベックス連結1,372名、ユニバーサル ミュージック約650名、ポニーキャニオン404名、キングレコード315名)といった並べ方になります。難易度そのものの順位は、公表データからは作れません。
学歴フィルターはありますか
採用大学を公表している会社がないため、フィルターの有無は確認できません。要項の上では、エイベックスが「学歴は問いません」、キングレコードが「学部・学科不問、社会人経験のある方も応募可」と明記しています。一方で日本コロムビアグループは「大学、大学院を卒業見込みの方」で、短大・専門学校の記載がありません。まず要項の応募資格を確認してください。
27卒でもう間に合わない場合、どうすればいいですか
キングレコードの2027年新卒は秋採用を実施しており、本エントリー締切は2026年10月4日(日)です(2026年9月21日時点の公式サイト掲載内容)。また、ソニーミュージックグループ・ポニーキャニオン・ユニバーサル ミュージック・ビクターエンタテインメント・日本コロムビアグループは、いずれも既卒(職歴なし、またはユニバーサルは第二新卒)を応募対象に含めています。
28卒はいつから動けばいいですか
2026年9月21日時点で、28卒向けの本選考の募集要項を公開している会社は確認できませんでした。ただしインターンシップやオープンカンパニーは動いています。エイベックスは2026年4月に28卒向けマイページを公開し6月に1dayオープンカンパニーを告知、ソニーミュージックグループは2026年8月に秋のインターンシップ開催を告知しました。2027年度の実績を見るとソニーミュージックグループのエントリー締切は1月14日なので、年明け早々に動ける状態を作っておくのが安全です。
未経験・音楽の専門知識なしでも応募できますか
要項の上では学部・学科を問わない会社がほとんどです。ユニバーサル ミュージックは採用FAQで「実績として業界未経験の方も採用し、活躍しています」と回答しています(こちらは中途採用に関する設問への回答)。ソニーミュージックグループのエントリーは、エントリーシート+15秒程度のエントリームービー、またはSNSアカウント+エントリームービーの2方式で、SNS方式については「フォロワー数・投稿数で判断することはございません」と明記されています。
ソニーミュージックとエイベックス、どちらが入りやすいですか
比較できる公式データがないため、どちらが入りやすいとは言えません。わかっているのは条件の違いです。ソニーミュージックグループは2000年4月2日以降生まれという年齢条件があり、選考は対面のみで1月中旬に締切。エイベックスは性別・国籍・学歴を問わず、2027年度のエントリー期間は1月5日から2月1日でした。応募資格と締切で自分に合うほうから動くのが現実的です。
レコード会社以外で音楽に関われる仕事は何がありますか
ライブ制作・会場運営(ソニー・ミュージックソリューションズ、Zeppホールネットワークなど)、音楽出版(フジパシフィックミュージックなど)、マネジメント、アニメ・映像、配信のデジタルセールスといった領域があります。この記事で取り上げた会社の多くが、音楽以外の事業も採用対象に含めていました。詳しくは音楽業界への就職は難しい?新卒で狙える職種・会社の選び方を読んでみてください。
対象は2027年3月・2028年3月に卒業予定の学生です(2026年9月22日時点、公式の申込フォーム)。登録も面談も無料で、本エントリーが集まる1月までの準備に使えます。