「映画の宣伝の仕事がしたい。でも、新卒でどこに応募すればいいのかわからない」
先に答えを書くと、新卒から映画宣伝の仕事を目指せる入口はあります。ただし、「会社に宣伝の仕事がある」「その採用に自分が応募できる」「入社後に宣伝の担当になる」は、それぞれ別に確認が必要です。東宝や松竹は総合職でまとめて採用し、宣伝を含む配属先は入社の前後に決まるからです。
私は学生時代に映画館で4年間アルバイトをしていて、現在はイベント業界の一員として映画業界の方々と仕事をする機会が頻繁にあります。この記事の採用情報は、各社の公式ページに書かれていることだけを使いました。学生のうちの準備は「記事側の提案」として分けて書きます。
注意:採用情報は2026年10月11日に各社の公式ページで確認したものです。終了した募集も「どんな採用の形があるか」の例として載せていて、いま応募できる求人の一覧ではありません。応募の前に最新の募集要項を確認してください。
新卒で映画宣伝の仕事を目指せる就職先
公式の採用ページを見ていくと、就職先は次のように分けて考えられます(分け方は記事側の整理です)。
1. 映画会社の総合職
映画を配給する会社が、総合職としてまとめて採用する形です。東宝の2027年度の募集要項は、適性・能力に応じて、映画・アニメ・演劇・不動産経営などの企画・製作、営業、宣伝、管理などの職種に配属するとしています。宣伝は配属先の候補の1つで、宣伝の担当だけを募集しているわけではありません。
2. 映画の案件を扱う広告・PR・デジタルの会社
映画の宣伝を仕事として受ける会社もあります。東映エージエンシーは東映グループの総合広告代理店で、新卒の仕事内容に映画宣伝やタイアップ業務を挙げていました。東映株式会社とは別の会社で、採用も別です。フラッグのように、映画などのエンタメ業界をクライアントに持つデジタルの会社もあります。どちらも映画以外の案件を扱うため、担当がすべて映画になるとは限りません。
3. キャリア採用ページに載っている募集(応募条件で見分ける)
松竹のキャリア採用ページには、松竹グループの広告代理店・PR会社である松竹ナビの、映画宣伝を含む募集が掲載されていました。映画宣伝は「経験者優遇」で、実務経験が必須とは書かれていません。ただ、新卒専用の枠や対象の卒業年度を確認できなかったため、この記事では新卒採用の例に数えず、仕事内容の参考として扱います。
この募集の雇用形態は契約社員(社員登用制度あり)ですが、契約社員だからキャリア採用、というわけではありません。雇用形態(正社員・契約社員など)と採用区分(新卒採用・キャリア採用など)は別の項目なので、応募できるかは対象の卒業年度や応募条件で確認してください。
映画宣伝の仕事内容
各社の公式資料に書かれた仕事を、この記事では5つに分けました。分け方は記事側の整理で、どの会社にも同じ名前の部署があるわけではありません。1人がすべてを担当するとも限りません。
宣伝企画
東宝の事業紹介は、作品の存在を広く知らせ、その作品ならではの魅力を伝えて、観たいと思ってもらう仕事として宣伝を説明しています。松竹の職種紹介でも、映画宣伝部は作品ごとに合わせた宣伝施策を企画・実行する部署として紹介されていました。
パブリシティ
テレビ・雑誌・新聞・Webなどのメディアに、作品を取り上げてもらうよう働きかける仕事です。松竹ナビの募集(松竹のキャリア採用ページ掲載)では、メディアへの売り込みや折衝、取材の調整をパブリシティの業務として挙げていました。同じ募集では、広告のプランニング・出稿は「アドバタイジング業務」として別の項目でした。取材や紹介を提案するパブリシティと、広告枠を買って出す広告は、別の仕事です。
予告編・ポスターなどの制作進行
松竹の映画宣伝部の紹介には、社内外の関係者と連携しながら予告編やポスターを制作し、メディア広告を展開することが書かれています。宣伝の担当者本人がデザインや動画編集をするとは限らず、制作を担当する社内外の人と、内容や日程を確かめながら進める仕事です。
イベント・タイアップ
松竹の映画宣伝部は、完成披露試写会などのイベントの開催も挙げています。東映エージエンシーの新卒の仕事内容には、イベントの企画・運営と、イベント会場・関係会社・協力業者などとの対応が並んでいました。イベントは当日だけでなく、準備や関係者との調整も含む仕事です。企業や店舗と組むタイアップは、松竹ナビの募集に企画の立案や提案営業が、東映エージエンシーの仕事内容に映画宣伝・タイアップ業務が書かれていました。東宝の事業紹介にも、さまざまな企業から宣伝の協力を得ながら作品を伝えるという説明があります。
デジタル・SNS
松竹ナビの募集には、WebやSNSのプロモーション施策の企画立案や予算管理が含まれていました。フラッグのキャリア採用サイトの社員インタビューでは、2021年に入社した社員が、映画を中心としたエンタメの案件で、デジタルプロモーションの企画提案やSNSの運用、反応を確認して報告するレポーティングなどを担当していると話しています(中途入社の社員の個人の例で、掲載日の記載なし)。
映画の仕事には、宣伝のほかに、作品を作る製作、映画館に作品を売る配給(東宝の事業紹介による説明)、映画館で上映する興行があります。映画館との上映の交渉は、松竹では宣伝とは別の映画営業部の仕事として紹介されていました。それぞれの役割は映画配給会社に就職するには?で解説しています。
ポイント:宣伝は、営業・制作・メディア・映画館などと連携して進める仕事で、宣伝だけで作品の成績が決まるわけではありません。東宝の事業紹介でも、映画館へのセールスは社内の企画・宣伝チームと連携すると書かれていました。
応募先を調べるときは、次の順で確かめると、仕事内容と募集を混同しにくくなります(記事側の提案です)。
- 職種紹介や募集要項の仕事内容に、上の5つのうちどれが書かれているか
- その業務を自社で行うのか、広告会社など社外と組んで進めるのか
- その業務が、新卒の募集の仕事内容として書かれているか(キャリア採用ページの業務ではないか)
公式採用の入口と注意(2026年10月11日確認)
新卒の採用ページで、映画宣伝とのつながりが確認できた3社を並べます。並び順に意味はありません。終了した募集を含むので、受付状況の列を先に見てください。
| 会社 | 年度・採用区分 | 宣伝とのつながり・配属 | 応募できる人の主な条件 | 受付状況 | 出典 |
|---|---|---|---|---|---|
| 東宝 | 2027年度・総合職一括採用 | 配属先の職種に「宣伝」を含む。約2か月の集合研修の間に面談などを行い、正式に配属 | 2026年5月〜2027年3月に大学・大学院を卒業・修了見込み、2027年4月に入社可能、2000年4月2日以降生まれ。学部・専攻は不問。既卒・短大卒・専門学校卒は応募不可 | 掲載中の募集要項は2027年度向け。27年度本選考の現在の受付状況・締切は確認できていない。採用サイトに2028年度新卒採用のエントリー開始(2026年4月1日)の告知があるが、これだけでは宣伝を含む本選考の受付中とは判断できない(28年度の要項は未確認) | 募集要項、新卒採用トップ |
| 松竹 | 2027年度・総合職(映像・演劇・不動産・その他事業・管理) | 職種紹介に映画宣伝部。内定後に本人の希望と適性で配属を決定し、入社後4年間はジョブローテーション制度 | 4年制大学を卒業見込み・卒業、正社員の就業経験なし、1997年4月2日以降生まれ | 2027年度の本エントリー(一般採用)は2026年2月9日〜2月20日12:00で、期間は経過。追加募集の有無と28卒の本選考日程は未確認。27卒・28卒のエントリー入口があるだけでは受付中と判断できない | 募集要項、エントリー案内(PDF)、よくある質問 |
| 東映エージエンシー | 新卒採用(2027年3月卒) | 東映グループの総合広告代理店。仕事の例に映画宣伝・タイアップ業務など(配属部署で異なる) | 2027年3月に大学院・大学を卒業見込み。全学部・全学科 | 募集は終了 | 採用情報 |
表の読み方で、押さえておきたい点が3つあります。
- 東宝・松竹とも、宣伝の担当になると確約する記載はありません。宣伝は総合職の配属先の候補の1つです
- 学校の種類の条件は会社で違います(詳しくはよくある質問で)
- 募集要項やエントリーの入口が掲載されていても、募集中とは限りません。28卒の日程や条件も、27卒と同じになるとは限りません
東宝の選考の流れは東宝の就職難易度、東映・松竹の採用データは東映・松竹の新卒就職難易度にまとめています(後者は東映株式会社の記事で、東映エージエンシーの採用とは別です)。
補足:フラッグの採用サイトは、2027年度の新卒採用はマイナビで確認するよう案内しています。マイナビ2027の募集要項(2026年10月11日確認)にあるコースはビジネスプロデューサー(法人営業)で、クライアントの例に映画などのエンタメ業界が挙がっていました。デジタルプロモーションプランナーの採用は終了で、企業ページの説明会の欄には、予定の説明会はすべて終了し、追加はエントリー者向けと書かれていました。法人営業の募集で、映画のSNS宣伝の担当の募集ではありません。
学生のうちにできる準備(記事側の提案)
ここからは採用情報ではなく、この記事からの提案です。応募に必要な提出物や選考課題ではなく、選考で有利になると約束されるものでもありません。学生のうちは、宣伝を見る練習と自分の経験の整理をしておくと、応募先選びと面接の準備に使えます。
宣伝研究メモを1枚作る
最初は観察から始めます。公式の予告編・告知・タイアップを見つけたら、誰に向けたものか(対象)と、いつ出たか(発信の時期)を記録してください。なぜその相手・その時期なのかという制作側の意図は、公式に書かれていない限り「自分の推測」と書き分けます。
観察に慣れたら、実在の作品を1本選ぶか架空の企画を立てて、次の6項目を1枚にまとめる自主練習をします。
- 作品名、または架空の企画
- 誰に届けたいか、その人は何に関心があるか
- 何を伝えるか、その根拠になる作品の要素
- 使う媒体を1つと、選んだ理由
- 公開前に誰の確認が必要になりそうか
- どんな反応を見て、何を直すか
注意:実在の作品で作るときは、公式に公開されている情報だけを使ってください。公開されていない予算や成果を推測で書かない、会社の担当者を名乗らない、公式の資料に見える体裁にしない、画像や映像を転載しない(URLと自分の言葉でまとめる)の4点を守ってください。
実際の経験を、仕事の要素に結び付ける
架空の課題と実際の経験は混ぜずに、本当に経験したことだけを整理します。たとえば次のような結び付け方があります。
- 学園祭で、締切に間に合うよう担当や日程を調整した → 進行
- 告知文を出す時期や書き方を見直した → 読み手を考えることと振り返り
- 接客でよく受ける質問を整理した → 伝え方
- ゼミで資料を比べて結論を出した → 根拠を示すこと
どれも「こう書けば通る」という型ではありません。面接で話すのは、自分が実際にしたことと、その結果だけにしてください。
志望動機を考えるときも、「この作品が好き」という感想で止めずに、「誰に、何を、どう届けたいか」まで進めると、宣伝の仕事の説明と結び付きます。「どう届けるか」の部分には、上で整理した実際の経験(進行・伝え方・根拠)を当てはめてください。書き方の手順はエンタメ業界の志望動機の書き方と例文にまとめています。
応募前に確認したいこと
気になる募集を見つけたら、次の項目を募集要項で確認してください。
- 採用主体:応募先はどの会社か(グループ会社は別の採用)
- 対象の卒業年度:何年何月までに卒業する人が対象か
- 学校の種類:大学院・大学・短大・高専・専門学校のどこまでが対象か
- 既卒の扱い:卒業後でも応募できるか
- 就業経験:正社員として働いた経験がある人も対象か
- 採用区分:総合職か、職種を決めた募集か
- 職種と配属:宣伝の担当が決まる時期と決まり方、確約の有無
- 雇用形態:正社員か契約社員か、登用制度の条件
- 必須条件:「必須」と「歓迎」「優遇」を分けて読む
- 勤務地:本社だけか、支社や転勤の可能性があるか
- 締切と受付状況:いま受け付けているか、締切の日時
ポイント:採用ページにエントリーやマイページへの入口があるだけでは、募集中とは限りません。年度や締切がわからないときは、推測で判断せず、各社の公式の問い合わせ先に確認してください。
迷ったときの相談先
本命の会社が決まっているなら、その会社の公式採用ページの案内に沿って応募するのが基本です。学校のキャリアセンターに相談するのも1つの手です。
就職エージェントに相談する方法もあります。相談する前に、自分の卒業年度と学校の種類がサービスの対象に入るかを確認してください。新卒向けのキャリアパーク就職エージェントは、公式のよくある質問で、主な対象を4年制大学の卒業・卒業見込みの人としています。
エージェントを通して映画宣伝の求人や特定の会社を紹介してもらえるかは、私は確認していません。紹介を受けても、特別な選考や配属、内定が約束されるわけではありません。電話や面談の連絡にかかる負担、紹介される会社が希望と合わない可能性、最初の面談で聞いておきたいことは、キャリアパーク就職エージェントの評判・口コミで確認できます。読んでから、使うかどうかを決めてください。相談が要らない人や対象外の人は、公式の採用ページとキャリアセンターで進めて問題ありません。
よくある質問
新卒で入社すれば、映画の宣伝担当になれますか?
確認した範囲では、宣伝への配属を確約する記載はありませんでした。決まり方は上の表のとおりです。松竹のよくある質問では、エントリーシートが最初の配属希望になるとしていて、内定者研修で映画宣伝ワークなどの企画ワークを行うとも書かれていました(今後変わる可能性ありとの注記つき)。東映エージエンシーも、仕事内容は配属部署で異なるとしています。
大学や学部は関係ありますか?短大・専門学校は?
学部は、東宝が学部・専攻を問わず、東映エージエンシーも全学部・全学科が対象でした。一方で、学校の種類には条件があります(東宝は短大・専門学校の卒業者を対象外、松竹は4年制大学。フラッグは短大生・高専生・専門学校生も対象)。「学部不問」と「どの学校からでも応募できる」は別なので、学校の種類の条件を確認してください。
資格や英語は必要ですか?
確認した東宝・松竹・東映エージエンシーの新卒の募集要項には、応募の条件として資格や語学力を求める記載はありませんでした。東映エージエンシーは、求める人物像にWord・Excel・PowerPointなどのPCスキルを挙げています。会社や年度で変わるので、応募する年度の要項で確認してください。
映画館のアルバイトは有利になりますか?
私も学生時代に映画館で4年間アルバイトをしていて、チケットのもぎりや場内の清掃、グッズの販売を担当していました。これは興行の側の接客の仕事で、宣伝の実務とは別のものです。確認した資料にも、映画館でのアルバイト経験が選考で有利になるという記載はありませんでした。話すなら、お客さんからよく受けた質問や案内の工夫など、実際にしたことを「伝え方」の経験として整理してみてください。
「未経験歓迎」「第二新卒」の求人なら、学生でも応募できますか?
求人のラベルだけでは判断できません。第二新卒は在学中の人を指す言葉ではなく、未経験歓迎も応募条件のすべてを表してはいないからです。たとえば松竹のキャリア採用ページに載っていた松竹ナビの募集は、映画宣伝を経験者優遇とし、対象の卒業年度は書かれていませんでした。対象の卒業年度、学校の種類、必須の経験、受付状況の4つを、要項で確認してください。
給与はどれくらいですか?
会社全体の平均給与(平均年収)は、映画宣伝の担当者の年収を示す数字ではありません。職種別の数字を見つけたときも、どの職種・雇用形態・年次を対象にした数字かを確かめてください。新卒で応募するときは、応募する年度の公式の募集要項で、職種、雇用形態、初任給、手当(固定残業代が含まれるかどうか)を確認するのが確実です。
まとめ:会社・応募資格・配属を分けて確認する
- 新卒から映画宣伝の仕事を目指す入口はある。ただし「会社に宣伝の仕事がある」「自分が応募できる」「宣伝に配属される」は別に確認する
- 就職先は、映画会社の総合職と、映画の案件を扱う広告・PR・デジタルの会社。キャリア採用ページの募集は、応募条件を確かめて分けて見る
- 仕事は宣伝企画、パブリシティ、予告編・ポスターの制作進行、イベント・タイアップ、デジタル・SNSなど。担当範囲は会社と部署で変わる
- 3社の2027年度の情報は、終了や期間の経過を含む(2026年10月11日確認)。28卒が同じ条件とは限らない
今日からやること:宣伝研究メモを1枚作る。次に東宝・松竹・東映エージエンシーの採用ページを開き、年度・採用区分・配属の決まり方・受付状況をメモする。最後に、自分の実際の経験を、進行・伝え方・根拠のどれに使えるか書き出す。