「映像制作会社はやめとけ」と検索して、この記事にたどり着いた人もいると思います。映像の仕事に憧れているのに、ネットにはきつい話ばかり並んでいる。不安になりますよね。
結論から言うと、映像制作会社が一律に「やめとけ」な場所だとは、私は思いません。そう言われる理由の一つに、締切と受注で動く仕事の仕組みがあります。仕組みがわかれば、どの会社でどれくらい当てはまるのかを、応募前にかなり確かめられます。
この記事は、CM・MV・テレビ番組・Web動画などを作る映像制作会社に、新卒で入るか迷っている学生向けに書いています。次の順で整理しました。
- なぜ「やめとけ」と言われるのか:仕事の仕組みから見る
- 自分の候補の会社ではどうか:確かめ方
- 向いている人・合わない人
- それでも目指すなら、どう選ぶか
私はイベント・コンサートの業界で15年以上働き、営業を担当していた時期も、現場の仕事をしていた時期もあります。テレビ番組の制作スタッフとロケ現場で一緒になったこともあります。とはいえ、映像制作会社の内側をすべて知っているわけではありません。求人の傾向は2026年10月時点の検索結果で見た範囲のもので、会社名は挙げていません。応募するときは、公式の最新の募集要項を読んでください。
この記事の要点は3つです。「やめとけ」の正体は、締切が先に決まる受注の仕事という仕組みであること。当てはまり方は会社・案件・職種でかなり違うこと。そして、募集要項と説明会で確かめれば、自分で判断できることです。
映像制作会社が「やめとけ」と言われる4つの理由
まず、なぜこの言葉が出てくるのかを見ていきます。会社ごとの体制に加えて、業界の仕事の進み方も関わっています。ここで挙げる仕組みは理由の一部で、どの会社にもそのまま当てはまるわけではありません。
締切が先に決まり、終盤に作業が集まる
映像の仕事は、多くの場合「公開日」や「放送日」が先に決まっています。CMならキャンペーンの開始日、MVなら楽曲の公開日、番組なら放送枠です。
締切は動かせないのに、途中では修正や確認待ちが入ります。たとえば撮影後に依頼側から「この場面を差し替えたい」と言われると、編集や確認の時間は締切までに詰め込むしかありません。その結果、納品前の数日に作業が集中しやすくなります。
就職口コミサイトでも、繁忙期は帰れない時期があったという声を見かけました。ただ、これは一人分の感想です。業界全体がいつもそうだという意味ではない点は押さえておきましょう。
受注の仕事なので、予定を自分で決めにくい
映像制作会社の多くは、広告会社やテレビ局、企業などから依頼を受けて作品を作ります。つまり、スケジュールの主導権は依頼側にあることが多いんです。
さらに、1本の映像には外部のスタッフも関わります。撮影部、照明部、編集を担うポスプロ(撮影後の仕上げ作業を担当する会社)などです。依頼側の確認が1日遅れると、その後ろの全員の予定がずれていきます。
私もイベントの現場で、似た経験をしてきました。本番の日付は動かないのに、内容の決定だけが遅れる。そのしわ寄せは、現場に近い人ほど受けやすいんですよね。映像制作会社の制作進行も、この「間に立つ」立場にいます。
新卒の入口は「作る」より「支える」仕事が多い
検索で見た新卒向けの募集は、制作進行(プロダクションマネージャー)やアシスタント職が中心でした。新卒でいきなり監督や編集の責任者になる例は、見た範囲ではほぼありませんでした。
制作進行の仕事は、ロケ地や機材の手配、スタッフへの連絡、予算や日程の管理などです。「自分のアイデアで映像を作りたい」と思って入った人ほど、最初の数年は「思っていた仕事と違う」と感じやすいはずです。
この落差が、「やめとけ」という声につながっている面もあると私は見ています。仕事がきついかどうかとは別に、期待と実際の差が大きいと続けにくくなるからです。
給与の数字が、条件を読まないと比べにくい
映像制作の求人では、月給に固定残業代(あらかじめ一定時間分の残業代を含めて払う仕組み)が入っている例を見かけます。
固定残業代に含まれる時間数は、求人によって違います。同じくらいの月給でも、基本給と残業の前提がまるで違うことがあるわけです。
月給の総額だけで比べると、働き方の前提を見落とします。基本給、固定残業の時間数、それを超えた分の支払い、の3点を並べて読んでください。
「やめとけ」が当たるかは、候補の会社ごとに確かめる
ここまでの理由は、どの会社にも同じ強さで当てはまるわけではありません。会社の規模、扱う映像の種類、職種で変わります。では、何を見れば判断できるのでしょうか?
募集要項で最初に見る4項目
まずは募集要項です。私なら、次の4項目を表にして候補の会社を並べます。
| 項目 | 見るところ | 気になったときに聞くこと |
|---|---|---|
| 給与 | 基本給、固定残業の時間数、超えた分の支払い | 実際の残業時間の平均はどのくらいか |
| 休日 | 年間休日、休日出勤の扱い、振替休日 | 撮影が休日に入ったとき、代休は取れているか |
| 雇用 | 正社員か契約社員か、試用期間 | 試用期間中に条件は変わるか |
| 職種 | 制作進行か編集か、総合職か | 入社後の配属や異動はどう決まるか |
空欄になった項目が、説明会や面接で聞くべきことです。書いていないこと自体が、確かめる手がかりになります。
説明会と面接で、具体的な場面を聞く
「忙しいですか?」と聞くと、多くの場合「時期によります」と返ってきます。答える側も、そうとしか言いようがないんです。
だから、場面を指定して聞くのがおすすめです。たとえば次のように聞いてみましょう。
- 「入社1年目の人は、撮影の前後の週をどう過ごしていますか?」
- 「繁忙期が終わったあと、休みはまとめて取れていますか?」
- 「1年目の人がよく担当する案件の種類を教えてください」
答えに具体的な場面が出てくる会社は、働き方を把握している可能性が高いと私は考えています。
口コミは「年度・職種・部署」をそろえて読む
口コミサイトも参考になります。ただし、映像制作会社は部署や案件によって働き方の差が大きい業態です。
10年前の撮影部門の声と、今年の編集部門の声を同じ重さで読むと、判断を誤ります。投稿の年度、職種、部署を確かめて、自分が応募する職種に近い声だけを拾いましょう。
業界全体でも、働き方を見直す動きはあります。映画の分野では、撮影時間や休憩のルール、安全やハラスメントへの対策などを定めた取引ガイドラインに沿って作られた作品を認定する仕組み(映適)が動いています(日本映画制作適正化機構 公式サイト、2026年10月18日時点で確認)。対象は実写映画で、CMやWeb動画の会社にそのまま当てはまる仕組みではありませんが、会社が自社の取り組みをどう説明するかは聞いてみる価値があります。
映像制作会社に向いている人・合わない人
仕組みを踏まえると、向き不向きはある程度見えてきます。ここでの話は私の見方で、診断ではありません。
| 向いている傾向 | 合わない可能性がある傾向 |
|---|---|
| 締切に向けて段取りを組むのが苦にならない | 毎日同じ時間に終わる生活を最優先にしたい |
| 人と人の間に立って調整するのが嫌いではない | 自分の作品づくりだけに集中したい |
| 下積みの期間を、学ぶ時間として受け止められる | 入社1年目から企画や演出を任されたい |
向いている人:段取りと調整を楽しめる
制作進行の仕事は、映像の技術よりも段取りと連絡が中心です。学園祭の運営やサークルの合宿で、全員の予定を組んで当日を回した経験がある人は、その感覚に近いかもしれません。
締切から逆算して段取りを組める人や、予定がずれたときにすぐ次の手を考えられる人は、この仕事の進め方と相性がいいはずです。ただ、向き不向きは職種や会社によって変わるので、一つの目安として読んでください。
合わない可能性がある人:生活の予定を固定したい
一方で、平日の夜や週末の予定を確実に守りたい人には、負担が大きく感じられるかもしれません。撮影は天候や出演者の都合で動き、前日に変更が入ることもあるからです。
ただし、これは「映像の仕事を諦めたほうがいい」という意味ではありません。企業のサービス紹介動画など、比較的予定を組みやすい案件を中心にする会社もあるはずです。社内で映像を作る事業会社の映像担当、という道も考えられます。自分が譲れない条件を先に決めておくと、選び方が変わってきます。
それでも映像制作会社を目指すなら、こう選ぶ
ここまで読んで「それでも作る側に行きたい」と思えたなら、その気持ちはしっかりした判断材料です。最後に、選び方の手順をまとめます。
作りたい映像のジャンルから会社を絞る
映像制作会社と一口に言っても、得意な分野はさまざまです。CM、MV、テレビ番組、Web動画、企業の紹介映像、ライブ映像などに分かれます。
ジャンルによって、締切の決まり方や1本にかける期間に差があるんです。CMは広告の開始日、番組は放送日に向けて動きます。好きな映像を3本選び、エンドクレジットや公式の制作実績で、どの会社が作ったかを確かめてみてください。候補の会社が、自分の好きな分野を実際にどれくらい手がけているかが見えてきます。
入口の職種を比べる
同じ映像制作でも、入口の職種で最初の数年の過ごし方は変わる、というのが私の見方です。
CMの制作進行については、CM制作のプロダクションマネージャーに新卒でなるにはで、仕事の工程と応募前の準備を整理しています。撮影後の編集に関わりたい人は、ポスプロの映像編集職を新卒で目指す方法が参考になるはずです。ADからどう次の仕事に進むのかを知りたい人には、ADのキャリアパスの記事を用意しています。
入社前に「話が違う」を減らしておく
入社後に後悔しやすいのは、仕事のきつさそのものより「聞いていた話と違う」と感じたときです。
内定が出たら、労働条件が書かれた書面を受け取り、募集要項と食い違いがないかを確かめましょう。疑問があれば、承諾する前に採用担当に聞いて大丈夫です。聞いたことで評価が下がるような会社なら、それも一つの判断材料になります。
よくある質問
映像の専門学校や映像学科でなくても入れますか?
会社によりますが、制作進行の募集では学部を問わない例も検索で見かけました。仕事の中心は段取りと連絡なので、映像の技術がなくても目指せる可能性はあります。対象の学部や学校種は、要項で確かめてください。
大手と中小では、働き方が違いますか?
規模だけでは決まらないと私は考えています。大手でも案件によっては忙しく、中小でも休みを取りやすい会社はあるはずです。会社の規模より、扱う案件の種類と、制度が実際に使われているかを確かめるほうが確実です。
一度入って合わなかったら、キャリアは終わりですか?
終わりではありません。制作進行で身につく段取りや調整の経験は、映像以外の仕事でも説明しやすい経験です。ただ、合わないと感じたときに慌てないよう、入社前に条件を確かめておくのが一番の備えになります。
まとめ:「やめとけ」の理由を、自分の候補で確かめる
映像制作会社が「やめとけ」と言われる背景には、締切が先に決まる受注の仕事という仕組みがありました。入口が制作進行中心であることも、期待との落差を生みやすくしています。
ただ、その当てはまり方は会社・案件・職種でかなり違います。ネットの声だけで決めるのはもったいないですよね。
最初の一歩として、好きな映像を1本選び、作った会社を調べてみてください。そのうえで候補を2〜3社に絞り、給与・休日・雇用・職種の4項目を表にします。空欄になった項目が、次に確かめることです。