結論から言うと、ポストプロダクション(ポスプロ)の映像編集には、新卒で入る入口があります。ただ、「映像編集」という言葉や、会社が採用ページを出していることだけでは、希望の編集職に応募できるとは判断できません。見るべきは、採用年度、雇用主、雇用形態、編集の職種名、学校の条件、提出物と受付の6つです。
この記事は、動画づくりに興味があり、副業の案件受注ではなく、会社で番組やCMを仕上げる仕事を選びたい学生向けに書いています。「求人サイトで探すと中途ばかり出てくる」「作品がないと応募できないのか」「オフラインとオンラインの違いが分からない」と迷っている人を想定しました。
公式ページの内容は、2026年10月17日に確認したものです。募集は年度ごとに更新されるため、応募前にリンク先で最新の掲載を読み直してください。ページが残っていることと、いま受付中であることは別の話です。
この記事の要点は3つです。新卒の入口はある。ただし編集の工程と募集職種を合わせて読む。作品提出の要否は会社ごとに違うので、全社必須とも全社不要とも考えない。
ポスプロの新卒求人で最初に見る6項目
求人サイトで「ポストプロダクション 新卒」と探すと、編集だけでなく企画や制作進行、経験者向けの求人まで混ざって表示されます。ポスプロを事業に持つ会社と、新卒で編集職を募集している会社は、同じとは限りません。
そこで、気になる募集を見つけたら、次の6項目をメモに写してみてください。
- 採用年度:27卒向けか、28卒向けか。昨年度の参考日程ではないか
- 雇用主:自分を雇うのはどの会社か。転載サイトではなく公式の要項で確かめる
- 雇用形態:正社員か、契約社員か。試用期間はあるか
- 編集の職種名:オフライン、オンライン、編集アシスタントなど、どの工程の募集か
- 学校の条件:大学・大学院・短大・専門など、自分の学校種と卒業時期が当てはまるか
- 提出物と受付:作品提出の要否と形式、エントリーと本選考のどの段階を受け付けているか
空欄になった項目が、その会社について次に確認することです。会社紹介に「編集」「MA」と事業が並んでいても、それは希望職種で採用されるという約束ではありません。
公式の募集例を3つの状態で比べる
ここで取り上げるのは、公式ページで仕事内容や条件を確認できた例です。人気順や入りやすさの順位ではありません。また、次の表は「いま受付中の募集一覧」ではありません。年度が予定の段階のもの、期限が過ぎたもの、年度の書かれていない随時募集を、同じ列で並べています。
| 会社 | 年度・受付の状態 | 職種・学校・雇用 | 作品提出 |
|---|---|---|---|
| 共同エディット | 28年度の要項に更新済み。日程は未決定で、下段の締切は昨年度の参考 | 編集職は「予定」。大学・大学院、短大・専門で生年月日の条件が別。正社員 | 掲載書類はES・成績証明(予定)。作品の扱いは要項で確認 |
| TREE Digital Studio | 27卒の編集職の募集(2次)は7月26日締切で期限経過。10月の3次募集の対象職種に編集職はない | オフライン/オンラインなどの編集職。学校種・雇用の詳細は年度の要項で確認 | 過去の新卒募集では、編集職に映像作品の提出を求める案内あり |
| WINK2 | 随時募集の表示。年度や入社月の記載なし | 編集アシスタントに「新卒可能」の記載。契約社員(試用3か月) | 公開ページの範囲では確認できず |
表で見てほしいのは、同じ「編集」でも、募集の状態がまったく違うことです。順に補足します。
共同エディット:28年度は「予定」の段階
共同エディットの新卒採用ページは、確認時点で28年度の内容に更新されていました。正社員の編集職は「予定」という扱いです。大学・大学院は、2028年3月までに卒業見込み、または卒業していて2003年4月2日以降生まれが条件です。短大・専門は同じ卒業時期で、2005年4月2日以降生まれとされています。
注意したいのは日程です。28年度の日程は未決定で、ページ下段にある5月1日締切などは昨年度の参考として載っています。検索結果の抜粋に「27年度は受付終了」と出ることもありますが、ページ本体の見出しと日程の注記を優先して読んでください。
TREE Digital Studio:工程の説明が具体的。ただし締切に注意
TREE Digital Studioの部署紹介では、オフライン、オンライン、カラリスト、MAという工程ごとに仕事が説明されています。アシスタントから仕事を覚え、顧客対応も担っていく流れも書かれており、職種を理解するのに役立ちます。
一方で、受付には注意が必要です。27卒向けで編集職を含んだ2次募集は、7月26日締切でした。10月5日には3次募集(10月18日締切)が告知されました。対象はシネマトグラファー、DIT、映像PM、スタジオ、撮影機材レンタルアシスタントで、編集職は挙げられていません。10月18日を編集職の締切と読まないでください。
同社の説明は一社の例です。すべての会社が同じ分担や昇格の年数で動いているわけではありません。
WINK2:新卒可だが、雇用形態と年度を確認
WINK2の採用ページでは、編集アシスタントに「新卒可能」とあり、IllustratorやPhotoshopなどの経験が挙げられています。表示は随時募集で、雇用は契約社員(試用期間3か月)です。
ここで混ぜないでほしいのが、同じページにあるエディターやMAの経験者向けの条件です。新卒の編集アシスタントの条件とは別に読んでください。また、年度や入社月が書かれていないので、27卒・28卒の枠として確定したものではありません。
注意:中途欄があるページでも、新卒の募集が続いているとは限りません。たとえばチョコフィルムの採用ページは、エディター・テロッパーの仕事を「未経験はアシスタントから」と具体的に説明しています。ただし、新卒の正社員採用は終了と明記されています。仕事の理解に役立つページと、いま応募できるページは一致しないことがあります。
オフライン・オンライン・アシスタントは何が違う?
求人で一番よく目にするのが「オフライン」「オンライン」という言葉です。名前から在宅勤務を思い浮かべる人もいますが、オンライン編集は、リモートワークのことではありません。
TREE Digital Studioの部署紹介をもとに整理すると、次のような分担になります。
- オフライン編集:撮影した素材から、カットをつないで構成を決める工程
- オンライン編集:構成が決まった映像に、合成などの仕上げを加える工程
- カラリスト:映像の色を整える工程
- MA:ナレーションや効果音など、音を仕上げる工程
このうち、本記事が中心に扱うのはオフラインとオンラインの編集です。色や音は隣の工程で、募集も別の職種名で出ることが多いので、応募前に自分が担いたいのはどれかを決めておくと探しやすくなります。
では、テレビ番組のADやCMのプロダクションマネージャーとは何が違うのでしょうか?ADやPMは、撮影の準備や進行、スタッフとの調整を担う立場です。ポスプロの編集職は、撮影後の映像を技術で仕上げる側にあたります。ADの仕事やキャリアはADになるにはをまとめた記事に整理しています。
個人で動画編集の案件を受ける働き方とも別物です。副業としての始め方はクリエイター副業の始め方で扱っているので、ここでは会社員として新卒で入る道に絞ります。
作品提出は「会社ごと」に確認する
「作品がないと応募できないのでは」と不安になる人は多いですよね。答えは、会社と年度によって違います。
TREE Digital Studioの過去の新卒募集では、オフライン/オンラインのエディター職に映像作品の提出を求める案内がありました。一方、共同エディットの28年度ページに掲載されている提出書類は、エントリーシートと成績証明書(予定)です。どちらか一方の例だけを見て、全社必須とも、全社不要とも考えないでください。
作品の提出がある場合は、次の点を要項で確かめておくと安心です。
- 提出の時期(エントリー時か、選考の途中か)
- ファイルの形式・長さ・容量の指定
- 共同制作の場合、自分がどこを担当したかを書く欄があるか
- 使った映像・音楽・写真の使用許可を取っているか
他人の映像や音楽を無断で使った作品は、応募の場でも問題になりえます。自分で撮った素材や、使用が許された素材で作ったものを出すのが基本です。
今からできる準備
準備の出発点は、高価なパソコンやスクールを買うことではありません。まずは、自分の手元にあるものを事実として並べてみてください。
- 担いたい工程を1つ決める:つなぐのが好きか、仕上げが好きか、色や音に興味があるか
- 持っている制作物を整理する:授業やサークルで作ったもの、自分の担当範囲、使ったソフト
- 足りない情報を確かめる:会社説明会や学校の窓口で、作品の要否や研修の内容を聞く
ソフトの操作は、各社の要項に挙がっているものを目安にすると、学ぶ順番を決めやすくなります。何を使えば受かる、という一律の基準はありません。
働き方と雇用は入社前に確認する
ポスプロの仕事は、番組の放送日やCMの納品日に合わせて動きます。そのため、働き方は会社や担当によって差が出やすい部分です。ここでは業界全体の労働環境を一括で評価するのではなく、応募先ごとに確認したい点を挙げます。
- 雇用形態(正社員・契約社員)と、契約社員の場合の更新や登用の条件
- 勤務時間の組み方(シフト制か、担当番組で変わるか)
- 勤務する場所(自社スタジオか、取引先の現場か)
- 入社後の研修と、アシスタントの期間に担当する仕事
説明会や面接で質問しづらいと感じる人もいるかもしれません。ですが、入社後のミスマッチを防ぐための確認は、遠慮しなくて大丈夫です。
応募先を探す入口と、相談先の使い分け
応募の中心は、各社の公式採用ページです。年度、条件、締切が書かれているのは公式なので、求人サイトで見つけた募集も、公式の要項で読み直しておくと、条件の取り違えを防げます。
会社を探す入口としては、日本ポストプロダクション協会の会員社採用情報が使えます。会員社の採用ページへのリンクが並んでいて、編集やグレーディング、MAなどを手がける会社を探せます。ただし、協会のページに会社が載っていることと、その会社が今年度の新卒を受け付けていることは別です。気になる会社を見つけたら、6項目のメモで公式の要項を確かめてください。
学校のキャリアセンターも頼れる相談先です。先輩の進路資料や、映像系企業の求人票が届いているかどうかは学校によるので、窓口やサイトで確かめてみてください。
そのうえで、「編集職にこだわるか、ほかの職種も見るか決めきれない」という人は、新卒向けの就活相談を使う手もあります。ただし、ポスプロの編集職の求人を紹介してもらえるか、作品の添削を受けられるかは確認できていません。内定や正社員での採用が約束されるわけでもありません。対象となる卒業年度や学校種も含めて、就活相談を使う前の対象と注意点を読んでから判断してください。
相談の予定があるからといって、公式募集の締切を後回しにしないでください。
よくある質問
大学と専門学校、どちらが有利ですか?
一概には言えません。共同エディットのように、大学・大学院と短大・専門の両方を対象に、別々の条件を置いている例があります。有利・不利よりも、志望先の要項で自分の学校種と卒業時期が対象に入っているかを先に確かめてください。
未経験でも応募できますか?
この記事で確認した新卒の募集には、実務経験を前提にしない例がありました。ただし、作品の提出やソフトの操作経験を求める募集もあります。「未経験可」と書かれていても、作品が不要という意味とは限らないので、提出物の欄もあわせて読んでください。
オンライン編集は在宅でできる仕事ですか?
いいえ、オンライン編集は工程の名前です。構成が決まった映像に合成などの仕上げを加える作業を指します。在宅勤務ができるかどうかは、職種名ではなく、勤務条件の欄で確認してください。
募集が終わっていたらどうすればいいですか?
次年度の募集を待つか、同じ工程を募集している別の会社を探すのが現実的です。終わった募集の要項は、仕事内容や求められる準備を知る資料として使えます。ただし、日程や条件を次年度にそのまま当てはめないでください。
編集アシスタントとADは同じですか?
別の仕事です。編集アシスタントは、ポスプロで編集の作業を補助しながら技術を覚える立場です。ADは、番組制作の現場で準備や進行を補助する立場です。どちらも「アシスタント」ですが、担う工程が違います。
まとめ:希望の工程を1つ決めて、要項を読む
ポスプロの映像編集には、新卒で入る道があります。ただ、同じ「編集」でも、予定の段階の募集、期限が過ぎた募集、年度の書かれていない随時募集が混ざっています。
最初の一歩として、オフライン・オンライン・アシスタントのうち、担いたい工程を1つ決めてみてください。そのうえで、気になる1社の公式要項を6項目のメモに写します。空欄になった項目が、次に確認することです。