「価格表示を工夫すれば、もっと売れるはずなのに…」
ECサイトの購買率が上がらない。
見積書を出しても成約しない。
そんな悩みを抱えていませんか?
商品の良さをどれだけ伝えても、価格の「見せ方」が間違っていると、お客さんは「高い」と感じて離脱してしまいます。
逆に言えば、価格の見せ方ひとつで「お得!」と感じてもらえれば、購買率は大きく変わります。
じつは、その鍵を握るのが「アンカリング効果」という心理テクニックです。
最初に高い数字を見せることで、次の数字が安く感じる——この効果を価格表示に活用すれば、同じ商品でも「買いたい」と思わせられます。
この記事では、アンカリング効果を価格表示に活用する7つのコツと、二重価格表示で失敗しないための注意点を具体例付きで解説します。
アンカリング効果とは
まずはアンカリング効果の基本を押さえましょう。
定義と語源
アンカリング効果とは、最初に提示された数字や情報が「基準(アンカー)」となり、その後の判断に強く影響を与える心理現象です。
「アンカー」とは船の錨(いかり)のこと。
船が錨を降ろすと、その範囲から離れられなくなるように、人間の判断も最初に見た数字に引っ張られてしまいます。
たとえば、「通常価格10,000円 → 今なら5,000円」という表示を見ると、5,000円が「安い」と感じます。
でも、その商品が本当に10,000円の価値があるかは別の話。
最初に見た「10,000円」がアンカーとなって、5,000円を安く感じさせているのです。
なぜアンカリング効果が起きるのか
アンカリング効果が起きる理由は、人間の脳が「効率よく判断を下そうとする」からです。
私たちは毎日、膨大な数の判断をしています。
すべてをじっくり考えていたら時間がいくらあっても足りません。
そこで脳は、最初に入ってきた情報を「基準」にして、素早く判断を下そうとします。
この性質を活用したのがアンカリング効果です。
最初に高い価格を見せておけば、次に見る価格が「安い」と感じやすくなるのです。
【価格表示で使える】アンカリング効果7つのコツ
ここからは、価格表示でアンカリング効果を活用する具体的なコツを7つ紹介します。
コツ1:元値と割引後価格を並べて表示する
最も基本的なテクニックは、元値と割引後価格を並べて表示することです。
- ❌「5,000円」のみ表示
- ⭕「
10,000円→ 5,000円(50%OFF)」
元値の10,000円がアンカーとなり、5,000円が「半額でお得!」と感じられます。
同じ5,000円でも、見せ方で印象がまったく変わるのです。
ポイントは、元値を打ち消し線で消して、割引後価格を目立たせること。
視覚的に「安くなった」ことが伝わります。
コツ2:高価格商品を先に見せる
商品を紹介する順番も、アンカリング効果に影響します。
たとえば、車のディーラーでは最初に高級車を見せることがあります。
500万円の高級車を見た後に、200万円の車を紹介されると「安い」と感じやすくなるからです。
具体的な活用シーンは、以下の通りです。
- ECサイトで高額商品を上部に表示
- 見積書で高価格プランを先に提示
- 営業トークでハイグレード商品から紹介
最初に高い価格を見せておくことで、本命の商品が「お手頃」に感じられます。
コツ3:松竹梅の3段階価格を設定する
価格を3段階(松・竹・梅)で設定するのも効果的です。
【具体例:コース料理】
| コース | 価格 |
| 松(プレミアム) | 10,000円 |
| 竹(スタンダード) | 6,000円 |
| 梅(ライト) | 3,000円 |
この場合、多くの人は真ん中の「竹」を選ぶ傾向があります。
「松」がアンカーとなり「高すぎる」と感じる一方、「梅」は「安すぎて不安」と感じる。
結果として、中間の「竹」が「ちょうど良い」と判断されやすくなるのです。
本命商品を真ん中に置くことで、意図した商品を選んでもらいやすくなります。
コツ4:端数価格(198円・2,980円)を活用する
コンビニやスーパーでよく見る「198円」「2,980円」という価格設定も、アンカリング効果の一種です。
198円と200円。差はわずか2円ですが、心理的な印象は大きく違います。
研究によると、価格の最初の桁がアンカーとして機能することがわかっています。
198円は「1」がアンカー、200円は「2」がアンカー。
最初の桁が小さい方が「安い」と感じやすいのです。
2,980円と3,000円も同様。
20円の差でも、「2,000円台」と「3,000円台」では印象がまったく違います。
コツ5:見積書に値引き欄を設ける
営業や商談で見積書を出すときは、値引き欄を設けましょう。
- ❌ 最初から値引き後の金額だけ提示
- ⭕ 合計金額を提示 → 値引き欄で割引 → 最終金額を提示
合計金額がアンカーとなり、値引き後の金額が「お得」に感じられます。
さらに「お客様だけの特別値引き」と添えると、特別感も演出できます。
コツ6:メーカー希望小売価格を明記する
「メーカー希望小売価格」を明記するのも効果的です。
「メーカー希望小売価格7,000円 → 当店価格5,600円(20%OFF)」
メーカー希望小売価格がアンカーとなり、店舗価格が「安い」と感じられます。
ただし、メーカー希望小売価格はカタログなどに明記されたものでないと表示できません。
勝手に高い価格を設定するのはNGです。
コツ7:リアルタイムの数字を見せる
価格だけでなく、「数字」全般にアンカリング効果は働きます。
具体的には、
- 「いま15人がこの商品を見ています!」←ECサイト、旅行予約サイト
- 「残り3個!お急ぎください!」←限定性
- 「累計販売数10万個突破」←社会的信頼性
などがあります。
「15人が見ている」という数字がアンカーとなり、「人気がある=良い商品」という印象を与えます。
また、「残り3個」は希少性を演出し、購入を後押しします。
【場面別】アンカリング効果の活用例
ここからは、場面別にアンカリング効果の活用例を紹介します。
ECサイト・通販
ECサイトは、アンカリング効果が最も活用されている場面です。
【活用例】
- セール価格と通常価格の併記
- 「〇〇円以上で送料無料」の表示
- 「いま〇人が閲覧中」のリアルタイム表示
- レビュー数・星評価の表示
アウトレットモールが成功しているのも、アンカリング効果のおかげです。元値を見せた上で割引率を表示することで、「お得に買えた」という満足感を与えています。
見積書・営業
BtoBの営業でも、アンカリング効果は有効です。
【活用例】
- 見積書を2〜3パターン用意し、高価格から提示
- 合計金額の下に値引き欄を設ける
- 「他社では〇〇円のところ、当社では〇〇円」と比較
コンサルティングなど価格相場がわかりにくいサービスほど、アンカリング効果は強く働きます。
LP・広告
ランディングページ(LP)や広告でも活用できます。
【活用例】
- 「通常価格〇〇円 → 今だけ〇〇円」のキャッチコピー
- 「〇〇円相当の特典付き」という表現
- 「月額〇〇円(1日あたり〇〇円)」と小さく見せる
あるオンライン英会話スクールでは、バナー広告に具体的な数字を入れたところ、クリック率が2倍になったという事例もあります。
実店舗・小売
実店舗でもアンカリング効果は活用されています。
【活用例】
- 高級商品を入口付近に展示
- POPで「通常価格」と「セール価格」を併記
- 「当店人気No.1」「売上ランキング1位」の表示
ジュエリーショップでは、先に100万円のダイヤを見せてから50万円の商品を紹介することで、50万円が「お手頃」に感じられる効果を狙っています。
二重価格表示の注意点|景品表示法を守る
アンカリング効果を活用する際、最も注意すべきなのが「二重価格表示」のルールです。
二重価格表示とは
二重価格表示とは、「通常価格」と「セール価格」など、2つの価格を並べて表示することです。
アンカリング効果を活用するには二重価格表示がほぼ必須ですが、やり方を間違えると景品表示法違反になる可能性があります。
違法になるNGパターン
以下のようなケースは、景品表示法違反になる恐れがあります。
【NGパターン】
- ❌ 実際には販売実績がない価格を「通常価格」として表示
- ❌ 相場から大きくかけ離れた価格を元値として表示
- ❌ メーカー希望小売価格でないものを「希望小売価格」と表示
実際に、あるECサイトが「通常価格12,000円 → 2,760円」と表示していたところ、通常価格に根拠がなく問題になった事例があります。
正しい二重価格表示のルール
二重価格表示を正しく行うためのルールは以下の通りです。
【守るべきルール】
- ⭕ 「通常価格」は、過去に相当期間販売した実績のある価格を使う
- ⭕ メーカー希望小売価格は、カタログ等に明記されたものを使う
- ⭕ 比較対照価格の根拠を説明できるようにしておく
「相当期間」の目安は、セール前の8週間のうち4週間以上、その価格で販売していたことが求められます。
アンカリング効果を使う際の注意点
アンカリング効果は強力ですが、使い方を間違えると逆効果になることもあります。
相場から大きく外れた価格はNG
元値が相場から大きく外れていると、消費者に不信感を与えます。
たとえば、他社で1,000円で売られている商品を「通常5,000円のところ1,000円」と表示しても、効果は薄いでしょう。
むしろ「普段は5倍の値段で売っているのか…?そんなに価値があるのか?」と疑われる可能性があります。
アンカリング効果を活用する前に、競合や類似商品の価格を調査しておきましょう。
長期間の使用は効果が薄れる
「特別価格」を長期間続けると、消費者はそれが「普通の価格」だと認識してしまいます。
セールが終わって元の価格に戻すと、「高くなった」と感じて不満につながることも。
アンカリング効果は、期間限定で使うのが効果的です。
信頼を損なわない範囲で活用する
過度な誇張や、消費者を騙すような使い方は、長期的な信頼を損ないます。
アンカリング効果はあくまで「価格の見せ方」のテクニック。
商品・サービスの価値を正しく伝えた上で、「お得感」を演出するために使うのが正しい活用法です。
よくある質問
Q1. アンカリング効果はどんな商品に効果的?
価格相場がわかりにくい商品ほど効果的です。
コンサルティング、オーダーメイド商品、専門サービスなどは、消費者が「適正価格」を判断しにくいため、アンカリング効果が強く働きます。
逆に、缶コーヒーのように相場が明確な商品は効果が薄くなります。
Q2. 二重価格表示は違法?
正しいルールを守れば違法ではありません。
ただし、実際に販売実績のない価格を「通常価格」として表示したり、根拠のないメーカー希望小売価格を使ったりすると、景品表示法違反になる可能性があります。
Q3. アンカリング効果とフレーミング効果の違いは?
アンカリング効果は「最初に見た数字が基準になる」現象、フレーミング効果は「同じ情報でも伝え方で印象が変わる」現象です。
たとえば「成功率90%」と「失敗率10%」は同じ意味ですが、印象が違います。
これがフレーミング効果です。
Q4. アンカリング効果が効かないケースは?
消費者がその商品の相場をよく知っている場合、アンカリング効果は効きにくくなります。
また、元値があまりにも非現実的な場合は、逆に不信感を持たれます。
事前に市場調査を行い、妥当な範囲でアンカーを設定しましょう。
まとめ|アンカリング効果で「お得感」を演出しよう
この記事では、アンカリング効果を価格表示に活用するコツを7つ紹介しました。
アンカリング効果は、価格の「見せ方」を変えるだけで購買率を上げられる強力なテクニックです。
ただし、消費者を騙すような使い方は信頼を損ないます。
正しいルールを守り、商品の価値を伝えた上で「お得感」を演出するのがポイントです。
この記事で紹介したコツを参考に、あなたのECサイトや見積書、LPにアンカリング効果を取り入れてみてください。